オレンジライフ【雀魂・Mリーグ】

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STORY 5-② by Yuki

natsumikan-toaru.hatenablog.com

 

 マスターには飯を食えと言われたが、ファミレスでして良い話ではないということで、俺と『アヤカ』はパーティルームの個室を借りた。

 防音性の高い部屋。声は外に漏れなさそうだ。

「初めに言っておきます。私はNPOの特殊工作員です」

「NPO?工作員?」

 何言ってんだこいつ。

「私たちが『組織』と呼んでいる法人…」

「あー待て待て。………。まあいいや。突飛な話だけど今はとりあえず受け入れとくか…。で、その工作員が俺や神崎姉弟に接触した理由は?」

「その前に、『組織』についての説明をして良いですか?」

「ああ」

 どうやらこちらから聞き出す手間は必要ないらしい。

「NPOが法人となるためには、その活動が、対象となるいくつかの活動分野の中に該当する必要があります。国際協力活動であったり、経済活性化であったり」

「ふーん?」

「『組織』はその中の『科学技術の振興を図る活動』をして、法人格を得ています」

「科学技術…。研究対象は『人間の才能』か?」

「察しが良いですね。その通り。人間の持つ『才能』が、どこから生まれ、どうやって残るのか。それを解明することを『表向きの』目標としています」

 いきなり、何を言い出すかと思えば…。

「『才能』なんて、科学的に定義することすら危ういと思うけどな。つーかそれなら遺伝って話で終わるんじゃないのか?『才能』はDNAで受け継がれる。これでハイ終わり」

「そう思いますか?」

「?」

「この世にあるすべての『才能』が、遺伝によって生まれると、本気でそう思ってますか?」

「…………」

「医者の子供だからと言って、目を見ただけで感情を読めますか?成功者の血を引いただけで、小学4年生のうちから自らを律し続けることができると思いますか?優秀な両親から生まれたからといって、他の人間を見下し続けていた人間が、誰からも好かれるような人格を作れると?」

「……」

 やはり俺の周囲の人々のことは筒抜けのようだ。

「『才能』は遺伝だけでは説明がつかない。これが『組織』の見解です」

「じゃあ……、『才能』はどうやって生まれるんだよ。『組織』はどう考えてる?」

「『バタフライ効果』はご存じで?」

「たしか、『カオス理論』とかいったっけ?アイザック=ニュートンの提案した説は、マクロな現象はすべて一定の法則で支配されているということ。すべてはニュートン力学に従い、自然現象の挙動はすべて完全に予測できる、って感じだよな」

「そう。それに対して『カオス理論』は、すべての自然現象は様々な要因が絡み合うことで、予測した挙動を示さなくなる、という理論。つまり『ある日北京で1匹の蝶が羽ばたくことで、その羽ばたきによって生まれた気流が翌日にニューヨークで「起きるはずの無かった」嵐を起こす』ことがありえるということ。これが『バタフライ効果』」

「それが?」

「DNAによって予測された『才能』が、子には宿らないことがある。それに対して、全く別の『才能』が宿るか、さらに優れた『才能』が宿ることがある。こちらは予測できない」

「…………」

 何を言い出すつもりだこいつは。

「予測できない『才能』は、DNAではなく、何か別の外因によってもたらされるのではないか、ということです」

「『才能』は、外的要因で生まれると?」

「そうです」

「…………。いや、それって。なんつーか。当たり前じゃね?」

「…………」

 真剣な顔で言うもんだから拍子抜けをしてしまうところだ。

「社会の中で生きていく人間が、他人と出会って、いろんな経験を経て成長していく。その中で卓越した能力が生まれる。これって普通のことだろ」

「確かに一般論では簡単に説明できます。ただ、本当に『普通』だと思いますか?」

「え?」

「その辺にいる有象無象共と生活したところで卓越した能力なんて生まれると思いますか?カズキ君の『索眼観測(アイスキャン)』はクリニックにマユナちゃんが運び込まれた時から彼自身が意識して目を見るようになって生まれた『才能』です。サツキの『絶対永続(パーマネンスエフォート)』は、元々父方の血から得た『天才』の弟のカズキ君を超えるために発現した『才能』。マユナちゃんの『魅了天使(セレスティアルチャーム)』も、『天才』のカズキ君の接触によってより精錬された」

「つまり…」

「他人の『才能』が『才能』を生む、ということです。DNAによる予測とは別に、他人の『才能』というイレギュラーが予測不能の『才能』を生む」

………………………!!!!!!!!

「おい。嫌な予感がしてきたぞ」

「カンが良い。結論を言いましょう。『組織』の最終目標。それは、『才能』を1か所に集めて最高の『才能』を生むこと。人知など優に超えた、本物の『才能』を」

「まさかそれが……」

「そう。『神様』です。私と、もう一人。集められた『才能』によって卓越した能力を与えられる予定の者。『神様候補』というわけですね」

 

 

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