オレンジライフ【雀魂・Mリーグ】

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STORY 5-④ by Yuki

natsumikan-toaru.hatenablog.com

 

 

「私は、『神様候補』であり、『組織』のトップである室長の直属の工作員。『神様候補』は私を含めて2人いますが、もう1人を右腕とするなら私は左腕でしょうかね」

「あえてそう言うってことは…、もう1人の『神様候補』の方が優秀だということか?」

「……。まあ、そんなところです」

 一瞬、表情に影が見えたような気がした。

「それについては今は関係ありません。重要なのは、私が室長に大きな恩を感じているということ」

「恩?」

「そしてもう一つ。私は『組織』のために、これ以上仕事したくないということ」

「何?」

 したくないってなんだ。今だって俺みたいな一般人相手にとんでも理論と俺の周りの人間への干渉を暴露してるとこだろ。

「もともと私がこの仕事をしていたのは、室長に恩返しをするため。仕事とは、各地にいる『才能』を『組織』に集めることです。もちろん、こんな薄気味悪い『組織』に満面の笑みで来てくれる子なんてほとんどいない。そんな時は、金を握らせます。教育環境を整え、将来を約束すると言えば、たいていの家庭は応じてくれます」

「………。まあ、教育費を払わずに教育をしてくれるうえに金をもらえるなら、悪くはない話か」

「それでも了承してくれない場合は脅す。拉致。崩壊。なんでもします」

「なんだと…」

 予想以上に腐ってる。

「ただし、『組織』に来てくれた子には相当な待遇が待っています。軽い軟禁状態には置かれるものの、たいていのモノは買い与えられるし、教育環境はその辺の有名進学校をはるかに超える充実ぶり。『才能』同士の触れ合いも大いに認められ、互いに互いを高めあう図式が成り立っています」

「……」

「ここまでが、私に知らされていた情報。そしてここからは、私に知らされていなかった情報」

 また、嫌な予感がするな。

「私が集めた『才能』が、何人も廃人になっていた」

「どういうことだよ」

「『組織』は、『才能』同士の高めあいだけでは足らず、『才能』個人に強制的な刺激を与え、『才能』を成長させようとしたんです。尋問、催眠、拷問、薬漬け。私が把握している分でもこれくらいのことは息を吐くかのように実行している」

「…………、完全な犯罪組織じゃねぇか…」

「それを知ったのは最近です。今、『組織』が私に与えている案件に取り掛かっている最中」

「今の案件って、今お前が『組織』に連れて行こうとしている『才能』があるってことか」

「そう。それがサツキ」

 !!

「テメェ…」

「あなたなら分かるでしょう?あなたの周りにいる人間のこと。『才能』のある人間って、性格に難ありなところはあるけれど、どこかに魅力を感じられる。私が導いた子達もみんな魅力的だった。でも、今はもうその子達は私と話をすることもできない。『美奈子』とはもう呼んでくれない。『晶さん』とはもう呼んでくれない。『佐那ちゃん』とはもう呼んでくれない。『伊万里お姉ちゃん』とはもう2度と呼んでくれない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「…………」

「この上サツキまで失うわけにはいかないんですよ」

「……。なら今すぐにでも仕事を断って『組織』から抜ければ良いんじゃないのか。それとも恩があって無理とか言うつもりか?」

「こんな非道をするヤツに、もう恩も何もないですよ。私が『組織』を抜けない理由は、サツキを守るためです」

 ……なるほど。

「お前の管轄に置いて、『組織』へ運ばれるまでは安全が保障されてるってことか」

「『組織』に運ばれないようにするため、時間稼ぎはしています。サツキの周りには、他にも『才能』を持った人間がいる。だからもう少し様子を見させろ。という感じで」

「サツキの周りの『才能』。カズキやマユのことか」

「あなたもですよ、ユウキさん」

 へえ。

「最初はね、サツキの代わりに誰でも良いから『組織』に送ってしまえば良いと思ってたんです。サツキさえ対象外になってしまえば、それで私は『組織』を抜ける。抜けた後『組織』が非道を続けようが知ったことじゃない。サツキさえ守れればそれで良いんです」

「それだと、カズキやマユや俺が危険にさらされることになるわけだな」

「それで良いと思ってたんです。最初はカズキ君。サツキの代わりに、同じ血を引く彼を送れば『組織』も納得してくれると思った。でも、やっぱりだめで。サツキと話すうちに、サツキがどれほどカズキ君を大事に思ってるのかを感じてしまったんです。サツキのことを考えたら、カズキ君を失わせるわけにはいかない」

「……、分かるよ」

 なんだかんだ言っても、サツキはカズキのことをこの世で1番信頼している。

「だから今度はあなたたち九条兄妹を送ろうと思いましたが、それもダメ。サツキとカズキ君にとって、あなたたちは家族のように大きな存在となってしまった」

「なるほど。で?じゃあどうするつもりだ?サツキの代案が無くなってしまった以上、もうサツキを連れていくしかないんじゃないのか?時間稼ぎにも限界があるだろうし」

「させません。させないに決まってる」

「具体的な考えはあるのか?」

「あなたに協力してもらいます」

「俺に?」

 また何か言い出したぞ…。

 

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