STORY 6-② by Ayaka
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natsumikan-toaru.hatenablog.com
「神崎サツキ。この子が今回の私の担当ですか〜?」
「ああ」
『組織』構内で、『アヤカ』はデスクに座る男と話していた。
「どんな『才能』〜?」
「医者の家系でな。成績優秀スポーツ万能容姿端麗」
「で?たったそれだけで『才能』があるなんて言わないでしょ〜?」
これに答えるのは、男のソバに立って控えていた『アマネ』と呼ばれる女だ。
「こいつのすごいところは『努力』だよ。幼少期から、死ぬまで果たし続けなければならない目標のために『努力』をし続けている」
「『努力』?ずいぶんあいまいな『才能』な気がするけど…」
男は答える。
「そうでもない。元日本人メジャーリーガーに『努力の天才』と言われた人物もいるように、『努力』できることそのものが大きな価値を持つことが多分にある」
「ふ〜ん。まあ分かりました〜。引き受けます〜」
「ああ。頼んだ」
「つーか、またアンタ無駄に時間かけて連れてくるつもりでしょ」
「え〜?」
『アマネ』が突っかかってきた。
「ちょっと交渉して渋られたら金をちらつかせればいい。それでもだめなら実力行使すればいい。アンタはいつもいつもターゲット1人連れてくるのに時間がかかりすぎなんだよ」
「だって、どうせなら仲良くなってから連れてきたいじゃん〜」
「あーーーー!甘ちゃん甘ちゃん!アンタが1人連れてくるまでに私が4人連れてきたことだってあるんだよ!?仕事なんだからちょっとは時間効率ってものを…」
何やら一人でヒートアップしている『アマネ』に、男が嗜めるように言う。
「まあまあ。時間こそかかるものの、『美奈子』が連れてくる『子』はみんな従順で扱いやすい。それだけ『美奈子』を信頼してくれてるんだろうが、そっちの方が『解析』の効率が良い場合だってあるんだ」
「ほら〜」
「チィィィィィィ!!!!!!!!!」
「とゆーか室長。『美奈子』じゃなくて『アヤカ』です〜」
「そーだった。まあいい。今回の神崎サツキはお前と同い年だ。コミュニケーションも取りやすいだろうし、いつも通りしてくれていい」
「分かりました〜。では失礼します〜」
『アヤカ』は部屋を去る。残ったのは男と『アマネ』。
「あんな『才能』無しなんかに仕事与えなくたって、私一人でも良いじゃない」
「『カオス理論』による後付けの『才能』は、元々遺伝的に『才能』の『因子』を持った人間にしか得られない。だから『神様候補』も遺伝的な『因子』の持ち主であるお前だけで十分だ」
「でしょ?」
ドヤ顔でふんぞりかえる『アマネ』。
「だが『カオス理論』の裏の顔は、『自然現象はすべて完璧には予測できない』、だ。だからこそ面白いじゃないか。もし『因子』を持たない者が『才能』に囲まれたらどうなるのか?後付けの『才能』は得られるのか?得られないのか?いや、もしかしたらそれ以上。こちらの予測を覆す何かが起こるかもしれない」
「………」
「念のためだ。もしかしたらの話。そうでなくてもあいつは俺に大恩を感じてる。『組織』の教育で頭も回るようになったし、自衛隊出身のお前の手ほどきで運動能力も高くなった。優秀なコマを使わんわけにもいかんだろう?」
「ふん。まあ、いいけど」
不満顔で一応の納得をし、『アマネ』も部屋を後にする。
「でもじゃあ、『あのこと』はあいつにバレないようにしないとね」
「分かってるさ」