夏ミカンの麻雀歴〜兄妹たちが生まれるまで②
ユウキ「店長から出された何切る問題をじっくり考え、答えを出し、牌効率の大事さを痛烈に感じた瞬間から、夏ミカンは麻雀にのめり込み始めた」
マユナ「もうやめない?ありがちな雰囲気がするよ」
カズキ「気分が良くなる話は聞けそうにないしなぁ」
サツキ「うーん。ダッツ買ってきましょうか?」
ユウキ「がんばって聞いてくれ」
カズキ「がんばんなきゃダメなのか…」
麻雀の勉強
ユウキ「その頃から麻雀こそが生活の中心になった…とはならなかった。よくある、雀荘に通ってるうちに大学に行かなくなるというパターンにはならなかった」
マユナ「ふーん」
カズキ「まあ最悪は免れたのかな」
ユウキ「理由はフリーが怖かったからだ。金もそんなになかったし」
カズキ「ただのチキンかい」
ユウキ「まあそれ以前に、麻雀の勉強そのものが楽しくてな、いろんな戦術書を買っては読んで、読んで強くなった気がして卓を囲む。それの繰り返しだった」
サツキ「うーん。聞いてる分にはいい感じの話に聞こえなくもない」
ユウキ「店長からも色々と教えてもらう機会が増えてな、大学の講義は単位を取る最低限の努力だけして、スキあらば麻雀のことを考えてた」
カズキ「大丈夫なのか心配になるな…」
ユウキ「まあ麻雀以外でも友人はそこそこいたし、一緒に勉強会とか開いたりしてたから、なんとかなってた」
サツキ「なんか面白くないですねー」
ユウキ「そうそう。夏ミカンにとって幸運だったのは、麻雀の戦術書で生まれて初めて読んだのが福地誠先生のこれだったことだと、彼はのちに語っている」
マユナ「あー」
サツキ「確かに、これ以外の、例えば古き良き麻雀の本とかからスタートするよりは絶対に良いよね」
カズキ「カンチャンドラ1即リー、ベタオリ、ある程度の牌効率。この辺りを押さえておけば、まず友人同士の麻雀で負けることはなかっただろうな」
ユウキ「なんやかんやで少しずつ力をつけ、天鳳でも特上卓に辿り着く力を得た。そして、その日が来た」
カズキ「なんすか」
マユナ「なに?」
ユウキ「店長とのガチバトルだ」
サツキ「ほう…」
店長との対局
ユウキ「それ以前にもネットで打ったことはあったんだが、その時は夏ミカンの友人を交えたエンジョイ麻雀の域を超えなかった。だがこの時は違った。少ないながらレートも乗せて、かなりガチの勝負だった」
サツキ「ほうほう」
ユウキ「メンツは夏ミカン、店長、そして前回出てきた同級生と、その友達」
カズキ「ふーん」
マユナ「同級生がメンツを揃えてくれたんだね」
ユウキ「うん。これに関しては夏ミカンはその同級生にすごく感謝してる。本人には死んでも言いたくないそうだが」
カズキ「ツンデレアピールすんな気色悪い」
ユウキ「そんで勝負が始まる。正直言って勝てると思ってた。客観的に見て同級生ともう1人とは知識量勉強量で負けてるとは思わなかったし、特上卓に到達した以上、店長がどれだけ強くても十分勝ち越せる気でいた」
サツキ「…結果は?」
ユウキ「負け」
カズキ「だと思った」
ユウキ「確か総合3位だった気がする。1位が言うまでもなく店長。同級生が爆発して2位で、もう1人がほとんど1人負けみたいな感じの4位だった」
マユナ「息巻いていたわりに2位にすらなれんのかい」
ユウキ「まあ麻雀だから負ける時もある。同級生に対してはそう思った」
サツキ「…店長に対しては?」
ユウキ「完敗だったとよ」
マユナ「点数的に?」
ユウキ「いや。もうホントに何もかも自分はこの人に届いてないと実感するレベルだったらしい。特上卓にタッチした程度で麻雀を分かった気になっていた自分が恥ずかしくなるほどだったとさ」
サツキ「……覚えがあるなぁ。そういうの」
マユナ「同じく」
カズキ「同じく」
ユウキ「これは今だから分かることなんだがな。振り込みは少ない。古臭い腰の重い麻雀でもないのに打点が高い。かわし手も何度もアガリ、アシストも操る。と思いきや絞りもできるし、絞りながら決め手を作るなんてことも。ホントのホントに、こんな人に勝てるわけないと思ったそうだな」
サツキ「自分の見ていた世界がいかに狭かったかを思い知ったわけですね」
ユウキ「仲間内で勝ってたって何の意味もないことを知った夏ミカンはもう止まらない。どうすれば強くなるのかを必死に模索した。天鳳は六段まで上がり、鳴きも勉強して手数も増えた」
カズキ「六段…。まあ一般的に見れば中級者にタッチしたとは言えるよな」
ユウキ「が」
マユナ「が?」
ユウキ「それでも店長には勝てなかった」
サツキ「はー」
ユウキ「いや、何回か打ったからその日の順位で勝つことはあったといえばあったんだが、全トータルなら完全に負け越してたし、勝つ日も自分の運がいい日か店長の運が悪い日かだった」
サツキ「少なくとも、実力で上回ったとは思えなかったわけですか」
マユナ「何がたりなかったんだろ」
ユウキ「夏ミカンの悪いところは、店長の麻雀を見ようとは思わなかったところなんだよなぁ」
マユナ「馬鹿じゃないの?負ける理由なんて見てみなきゃわからないに決まってるじゃん」
ユウキ「勝とう勝とうという気がハヤったんだろうな」
カズキ「そんなの、何度やっても負け続けるだけだろ」
ユウキ「まさにその通りでなぁ。そんなことを続けていくうちに、とうとう倦怠期に入っていくんだ」
サツキ「え」
カズキ「マジかよ…。そこまでやっておいて…」
ユウキ「続く」
マユナ「まさか3日目に突入するとは」
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