STORY 6-③ by Ayaka
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natsumikan-toaru.hatenablog.com
「ああああははははあははは!!!!!!!!!かわういいいいいひひいいいっひひひいいいいぃぃ!!!!!マユちゃん結婚してーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「死ね万年発情期!!!!!一刻も早く私から離れてください警察呼びますよ!!!」
(またやってるね〜あの2人)
大きい洋服店で、『アヤカ』は神崎サツキの監視をしていた。
今日は知り合いの九条マユナとショッピングに出かけ、この店で着せ替え人形よろしくマユナに服を着させまくって悶絶しているところだった。
「店員さん!これ全部!全部買います!」
「まったああぁぁぁーー!!テンション高すぎてお金の計算もできないんですか!?見てくださいこれ。値札!ゼロの個数が市民感覚の1つ増しです!こんなお金あるわけないでしょ!」
「カードで」
「!!?? ど、どこからそんな金が…」
「マユちゃんのためなら腎臓の1個や2個売れる」
「せめて1個にしてください!!気に入ったのは自分で買います!」
「でも全部は無理でしょ?」
「ま、まあ」
「カードで」
「カードぐにゃり」
「ちょっ。ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!??!!??!!??」
「うるさいです。再発行、とか?なんやかんやしてください」
「うぅ。そんなつれないマユちゃんもまたそそるけどね…」
周りの店員も勢いに押されて声をかけることもできないようだ。
(……ふむ)
それにしても最近よく一緒に遊ぶこのマユナという子。
確かに守ってあげたくなるような愛らしさのある子だが。
(ああまで人間辞め人間になるもんかね。サツキ〜)
小さいころ自分の家の医院に運んで、それ以来の再会からずっとあんな感じのようだ。
(カズキ君もマユナちゃんのことをずいぶん気にかけてる…、というよりなんだろ。信頼という言葉では片づけられない絆みたいなものがある…、気がする)
そしてなにより。ここ最近サツキを観るようになって、マユナのことを知っていくうちに…
(気のせいか私もあの子にどんどん魅かれてる気がするんだよねー。しゃべったことすらないのに)
単に、かわいい女の子は老若男女みんな大好きという話で済まされるのか。
そんなことを考えていたその時。
(お?)
マユナが『アヤカ』の隠れているところに向かって歩いてきた。
(おとと。移動移動)
こちらとしては、顔がバレるのはまずい。
(どうしたのかなー。服を物色するサツキを置いて1人でこちらに…?)
そして、元々『アヤカ』が隠れていた場所に到着して、マユナが呟いた。
「…………。気のせいか………」
(……………な……)
どうやら。
『アヤカ』が自分たちを見ていたことに感づいて様子を見に来たらしい。
(『アイツ』に教わった尾行術。今までバレたことは無かった……。いや、そういうカンの良い『才能』持ちにはバレたことがあるけど)
バレたこともあってさらに技術を上げたつもりなのに、それでもバレた。
(カンが良い子はたまにいる。でも見られている場所まで正確に感じるなんてこと……。)
となると。
(………あの子も?)
普通の子では絶対に見抜けない尾行を察する。カンが良いだけではダメ。
普段から気を抜かずに、周りに注意を払い続けているからこそできる所業。
(あの子も何かしらの『才能』持ちなんじゃ…)
『アヤカ』の仕事はサツキを『組織』に招待すること。だが。
(………。一応調べておこうか。九条家。確かお兄さんもいたはず……。)
実は。
この早い段階でマユナの『才能』に気づけたのは『アヤカ』にとっては大きな幸運だった。
他に『才能』候補がいるという事実が、『アヤカ』のサツキに対する当初の調査期間を延長させ、『あのこと』を知るまでの時間稼ぎになったのだから。