STORY 5-⑥ by Ayaka & Yuki
前
natsumikan-toaru.hatenablog.com
『アヤカ』と名乗る女性は、九条家に向かう道すがら、笑みを浮かべていた。
(これで、ひとまず第1段階はOK)
『アヤカ』の真の目的は、外国からの外的要因で『組織』を潰すことの他にもあった。
(九条ユウキ。思った通りの秀才。あんなチャットで私を特定した。あれなら能力は信頼できる。そして、その『才能』も)
目的はサツキとカズキの日常を今のままにすること。だが。
(ユウキさん。あなたの日常なんて私には関係ない)
本当の狙いは『組織』ではない。
(国が『組織』を潰したところで、『あの男』は止まらない。『あの男』が止まらない以上、サツキの身の安全はいつまでたっても保証されない。『あの男』を潰さなければ)
そのためには。
(外的要因の他に、内的要因が必要。内部から『組織』を崩壊させ、内部の人間が『あの男』を潰す図式を作る)
それには『アヤカ』一人の力では足りない。だから。
(九条ユウキを私の右腕にする…)
そのために彼を試した。そのために、彼に正体を明かした。
(彼の『才能』、『万象理解(セオリークリアー)』は凄まじい。今のところはまだ荒いが、成長すればブレインとして破格の性能を手に入れられるはず)
国が『組織』を消せば、『あの男』が再び動くまではさらに長い時間を稼げる。その隙にユウキの『才能』を鍛え、2人で『あの男』を再起不能にする策を張り、実行する。
(すみませんねユウキさん)
すべては親友を守るため。
(あなたなら、大きな業を背負っても、サツキの前では笑っていてくれるはず)
すべては自分の願いをかなえるため。
(たとえあなたの日常が音を立てて壊れてもどうでも良い。サツキを守り、『あの男』を潰せればね)
『アヤカ』は歩く。
親友のもとへ。そして。
親友が笑い続ける未来への道を。
別のところで、九条ユウキは不敵な笑みを見せていた。
(カズキに聞いといてよかったな。『目』のこと…)
ユウキは、『アヤカ』との会話中にカズキに聞いた話を思い出していた。
(俺はカズキほど『目』を見たからって何かが分かるわけじゃないけど、いつも表裏の無いサツキの目と比べれば『アヤカ』の目は曇っていた)
証拠などない。あくまでカン。
(あいつは、まだ何か隠してる。もしくは嘘をついているか)
前提として、九条ユウキは優秀な人間である。優秀な親が産み、優秀な妹と育ち、マスターやエリアといった天才と触れ合うことでその感性は磨かれ続けていった。
(俺をはめようとはな)
兄に甘やかされて育ったマユナは、その優秀さゆえに周りを見下し続けていた。カズキとの出会いでかなり解消されたが、根本的には消えたわけではない。
それに対してユウキは、他を見下した時期は短い。子供のころから大量に読んだ本のせいで、『人間なんてこんなもん』というふうに、一種のあきらめのような感情を持つようになったからだ。だから他の人間を劣等者とは見ず、誰にでも施しを与える人間になった。
(まあ。いいだろう)
不敵な笑みは消えない。
(俺を利用したいならすればいい。ただ、覚悟しとけよ『アヤカ』。俺もお前を利用する)
自分が利用されていると知って、なお黙って従うという返事をした。
(俺もそうなんだぞ、『アヤカ』。サツキやカズキ、そしてマユの安全さえ確保できればお前なんてどうでも良い。言ったろ。俺は俺が救いたいものを救うだけ)
『アヤカ』は1つ思い違いをしていた。
ユウキの『才能』は『万象理解(セオリークリアー)』。大量の本から大量の物語や知識を得た結果、初めて見る現象であっても想像力で解明してしまう力。
いわば、普通の人間が『百聞は一見に如かず』ならば、少なくともユウキは『五十聞けば一見分ぐらいは分かる』という感じ。
それもユウキの強烈な才能の1つだ。
ただし。
九条ユウキの根本はそれではない。
大量の本から得たのは知識だけではない。
(あいつの計画を理解したうえで利用する。そのためには何が必要か…)
自分が、物語の主人公のように中心にいるという感覚。自分の周りで何かが起こった時、それを正面から見据える力。そして、それを自らの力で変え、支配していく力。
『主格視点(メインキャラクター)』。
おそらくは。
成長すれば何物にも越えられない存在になりえる。
そしておそらくは。
だれよりも『天の意志』に近い存在にもなりえる。
そんな『才能』。
そして、別のところでまた一人。
次
natsumikan-toaru.hatenablog.com