夏ミカンの麻雀歴〜兄妹たちが生まれるまで③
前回まで↓
ユウキ「店長に格の差を見せつけられ、勉強しても勉強しても届かない。そんな日々を繰り返すうちに、心境の変化が出てくるわけだが…」
サツキ「いよいよ面白くなさそうな展開ですね」
マユナ「はあ。まあいつも通り付き合うしかないか…」
天鳳の挫折
ユウキ「この頃、天鳳の六段坂の恐ろしさを思っくそ体感する。打っても打っても減り続けるpt。放銃率の異常な増加」
カズキ「アレか」
サツキ「巷でいう、地獄モード」
ユウキ「もちろん運が悪いだけじゃない。今にして思えばメンタルズタボロの中で押し引きめちゃくちゃ鳴き判断めちゃくちゃの酷い麻雀を打ってた気がする」
マユナ「まあ、地獄モードって、最初に経験した時はホントにこの世の終わりレベルで心を砕かれるもんね」
カズキ「誰もが経験するとはいえ、気の毒な話ではある」
ユウキ「とうとう五段に落ち、その五段も後段の危機に陥る」
マユナ「何というジェットコースター」
サツキ「よっぽど酷い麻雀だったんだね…」
ユウキ「それが店長と力の差を見せつけられたあたりの出来事だっただけに、なかなか深刻でな。遂に五段後段戦を前に天鳳から逃げてしまったんだ」
カズキ「弱ぇ…」
サツキ「あーあ」
ユウキ「そんで、さらに生活に変化が起こる」
カズキ「ん?」
マユナ「まだ何かあるの?」
パズドラとの出会い
ユウキ「大学3年後期。夏ミカンの学部はそれまでにあらかたの単位を学生に取らせるシステムでな。その頃にはもう1週間に5,6コマしか講義が無かった」
マユナ「へぇ」
サツキ「学校に行かない日が増えたってことですか」
ユウキ「そう」
カズキ「え。じゃあまさか雀荘に入り浸ったりとかしたり?」
ユウキ「いや。夏ミカンはその時期、麻雀熱が圧倒的に枯れてた」
マユナ「天鳳でやらかしたから?」
サツキ「店長にボロ負けしたから?」
カズキ「友達とかと麻雀打たなかったんすか?」
ユウキ「打たなくなったんだよ。店長の実力を知り、特上卓のレベルも知った夏ミカンにとって、仲間内でする麻雀に意味を見出せなくなった」
マユナ「何様やねん」
ユウキ「学校に行かなくなったのもそれを後押ししたわけだな。友人と会う機会自体が減ったわけだから」
ユウキ「行かなかった。数回しか」
カズキ「なぜ?」
ユウキ「行って勝てる気がしなかった。金に余裕があるわけでも無かったしな。それくらい熱は冷めてたんだ」
マユナ「……学校に行かず、友達とも遊ばず、麻雀もしない?」
カズキ「何やってたんだその時」
ユウキ「パズドラ」
カズキ「は?」
ユウキ「パズドラ」
サツキ「………」
マユナ「………」
カズキ「マジか……。家にこもってずっとケータイをいじってたってことっすか?」
ユウキ「それだけではないけどな。やることない時はずっとケータイをいじってたんだ。一応少ないながらも友人と交流はあったし、バイトも続けてたけど、家にいる時間はそれまでの3倍くらい多くなってたと思う」
サツキ「ヤベェ」
マユナ「何がヤベェって、麻雀でダメ人間になるんじゃなくて、何にもなくて普通にダメ人間になってるじゃん」
カズキ「せめて麻雀やれよ」
ユウキ「ちなみに、夏ミカンをパズドラ に誘ったのは何を隠そう店長だ」
カズキ「店長ェ…」
ユウキ「パズルもうまくてなぁ。夏ミカンがクリアできないダンジョンも軽々とクリアしていってた。スポーツ推薦で学校行ってたとか言ってたし、ホントに何でもできる人だったんだよなぁ」
マユナ「なまじ優秀なだけに影響力も強かったわけか…」
☆留年☆
ユウキ「そんで事件が起こる」
サツキ「もうすでにいろいろ事件ですけど」
マユナ「何があったの?」
ユウキ「留年だ」
サツキ「な」
カズキ「マジすか…」
マユナ「いや。いやいや。何で?単位をあらかた取ってたって言ってなかった?」
ユウキ「うん。あらかた取ってた。もう十分取ってたと思っててな。履修登録していた講義をいくつかサボったんだよ」
マユナ「え」
カズキ「え」
サツキ「まさか…」
ユウキ「3年後期が終わって通知が張り出された。留年。なんと1単位、進級するのに足りなかったんだ」
マユナ「い、1単位?1単位足りなかった!?」
カズキ「何だそれは…。ギャグ狙いか?」
ユウキ「残念ながらホンマもんの計算ミスだ。1単位分。取らなければならなかった講義をサボったせいで留年したんだ…」
サツキ「……」
カズキ「……」
マユナ「思った以上のダメ人間だった…」
ユウキ「では続く」
マユナ「いや、もはや聞きたいとは思わないんですけど…」
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