STORY 4-② by Yuki
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「ユウキ。また本読んでるのー?」
「んー」
肌寒い日が増えた秋の終わり。(営業中に)本を読んでると、イタリア生まれの少女エリアに声をかけられた。
「『ヒャクネンノコドク』?」
「『孤独』を読めるのか。相変わらずすごいなお前」
「『百年の孤独』!?ユウキお前そんな本読んでんのか!どこまで若者やめれば気が済むんだ!」
「マスター、知ってるんですか?」
「俺も一回読んだことあるけど、読み辛さ半端なかったぞ」
「またユウキのおとーさんの本を持ってきたの?」
「そうだよ」
俺の親父は読書が趣味で、書斎には大量の本があった。種類も多岐にわたる。
そんで小2の時、俺は親父のやることをマネたいがために読みたい読みたいと駄々をこねたところ、とある本を渡された。
『読めるもんなら読んでみ?』
もちろん、小2が読めるような内容ではない。
うるさい息子を黙らせる目的だったのか、あるいは本当に小学2年生に読んでほしいと思ったのか。
とにかく俺はそれを読んだ。
知らない漢字も、言葉も、それに付随する知識も全部自分で調べ上げて、その本を1か月くらいかけて読破した。
それから俺は、親父の書斎にある本を勝手に拝借して読む習慣がついた。
読むスピードはどんどん上がり、10冊目になったあたりで1日1冊ペースまでには来ていた。
自分で言うのもなんだが、俺の頭の回転や対応力みたいなのは、それのおかげで身に着いた能力なんだと思う。
あの時親父が、『小学生には難しい』といって何も渡してくれなかったら、今の俺は無いんだろう。
『科学の方法』。
あれだけはずっと俺の部屋の本棚にしまってある。
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晶「へぇ。妹さんの友達が麻雀するんだ?」
ユウ「ってゆーか、一緒に始めたみたいだったけど」
晶「打ったんでしょ?その子らと」
ユウ「うん」
晶「どうだったの?」
ユウ「良かったよ。初心者にしてはかなり打ててた」
晶「3人とも?」
ユウ「そうだな。妹は、やっぱりああいうのは得意なんだろうし。その友達の姉弟も結構やる感じだった」
晶「どうせユウが勝ったんでしょ?」
ユウ「まあ。さすがに経験の差で」
晶「経験の差が無ければ負けてたと?」
ユウ「特に友達の姉貴の方はかなりの執念みたいのが見えたね。それにつられるように弟の方も目の色を変えたような」
晶「ふーん。そう。じゃあ次やる時はその才能に負けないようにしないとね」
ユウ「才能?」
晶「目標に向かって頑張るって、言うほど簡単なことじゃないってことだよ」
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たまによくわからないことを言うやつだとは思っていた。
だけどどうせネット上の知り合いだ。
少なくとも俺は直接会いたいとも思ってない。
俺には俺の、守りたいリアルがある。
その理想を脅かす存在となることを、俺は全く予測していなかったといえば、嘘になる。
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