STORY 4-③ by Yuki
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「俺がいつも何を見てるか?っすか?」
新学期になって初めての休日の夕方。
1 chanceには俺の妹のマユナと同じ部活仲間のカズキが部活終わりに来ていた。
「お前、よく相手の当たり牌とか鳴きたい牌とかビタ止めするだろ。俺も結構捨て牌読みとかするんだけど、正直お前ほど精度は良くない」
「カズキはホントにマジシャンみたいに止めるもんね。でもネットだとそうでもないよね」
「あー。まあ。そうっすね。このケーキうまいっすね」
逃がさん。
「奢ってやるから聞かせろ」
「マスターさん。まだ俺高校生なのにパワハラが…」
「俺も興味あるから聞かせてほしいな」
「私も」
「仲間がいねぇ…」
しょうがない。
ここにいるのは麻雀にあてられたヤツらばかり。
『当たり牌のビタ止めの秘訣』なんていうトピックに反応しないわけがない。
「なんでそんなに渋るの?マネされたら嫌だから?」
「いや。そういうわけじゃないけど…」
「ではどうぞ」
「…………。目です。目を見れば分かるんです」
「目?」
「目ぇ?」
「ぷっ」
「誰だ今笑ったの!!失礼すぎるにもほどがある!!!!!」
ヤバいな。『目を見れば分かる』なんて言われたらマネのしようがない。
ってゆーかヤベーわ。カズキマジヤベー。
「あー。でもそんな話をサツキさんから聞いた気がする」
カズキの姉のサツキとマユナは仲が良く、たまに一緒に出掛けたりしてるらしい。(絶対に俺かカズキ同伴じゃないとマユナは了承しないらしいが)(それでもなおサツキが振り切って2人で遊ぶこともあるらしいが)
「顔色で感情を判断するとかなんとか」
「なんだそれ。カズキは能力者なのか?」
「そんなSFっぽい話じゃないっす!ただなんとなくです。なんとなく、『あー、この人強そうな手をやってんなー』とか、『この人リーチかけたけどめちゃくちゃ妥協した感じすんなー』みたいなのが分かるんです」
「そういえばカズキって、対局中他のヤツの顔をチラチラ見てるかもしれん」
「目を見れば分かるって、なにで何が分かるんだ?目を見るだけで強いだの妥協してるだの。そんな複雑な心の動きまで分かるもんか?」
マスターの言うことももっとも。そもそも目で感情を汲むってのが常人の発想じゃない。
「野球のピッチャーって、ボールをリリースするまでに一連の動作があるじゃないすか」
「ワインドアップとかってやつ?」
「そう。目も同じ。『何かをする瞬間』の目だけではホントに小さな感情しか分からない。でも、そこに至るまでの目線や目の開き方なんかを総合的に判断すると、小さな『感情の流れ』から、『その瞬間』の感情を強烈に予測することができる。っていう感じです」
「むぅ。理屈はなんとなくわかるけど」
「なんか怖いよ。カズキ」
「だからあんましゃべりたくなかったんだよ!」
「いつからそんな特技があったの?」
「いいだろもう!……あの時のお前の『目』が印象的過ぎたからだよ…」
目で感情を読む、ね。
まあカズキ独特の特技なんだろうからマネできるとも思えんけど、一応覚えとくか。
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晶「目w」
ユウ「確かに医者の子供っぽい言動が見え隠れするヤツだけど、まさか麻雀でもそれを生かしてきてたとは」
晶「それもまた才能か」
ユウ「なぁ。お前ってなんかやたら才能才能って言うよな」
晶「そう?」
ユウ「何かあんの?」
晶「まあ。何かは、あるね」
ユウ「話したくないなら良いけどさ」
晶「ユウだって無関係じゃないかもよ?妹さんにも」
ユウ「?」
晶「『汝の意志するところをなせ、それが汝の法とならん』」
ユウ「アレイスター=クロウリーの『法の書』か」
晶「さすがに知見が深い」
ユウ「それがなんだ?」
晶「私の役目は別にある。でもやりたいことができた以上、それに従うわけにはいかない」
ユウ「何の話をしてる?」
晶「君はその両方に必要なピース。私の法の秩序を守るために」
ユウ「…………。何を言ってるか分からんけど、お前初めて一人称使ったな。『私』って。女だったのか。晶って名前じゃ判断付かなかった」
晶「晶は2つ前の名前だよ。ひとつ前は美奈子。美奈子、晶、佐那、伊万里、桃子、亜美、加奈、そして現在の名前で1クール」
ユウ「なんだ1クールって」
晶「私の役目は『神崎サツキ』。やりたいことは、それプラス『神崎カズキ』」
ユウ「おい!!!!!」
晶「知りたいよね?でもダメ。もし私の『正体』を知ることができたら。その時はすべて話しても良いよ。それまではバイバイ。『スペアプラン』くん。そしてありがとう。これだけの情報、あなたみたいな善人からでなければ得られなかったよアマチョロくん」
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それ以来、晶との交流は無くなった。
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