オレンジライフ【雀魂・Mリーグ】

雀魂やMリーグ、麻雀についてを書いております!

STORY 3-① by Satsuki

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「イオリくん!麻雀を!麻雀を教えたまえ!」

「うるさっ!」

 受験シーズン真っ只中の12月。

 アタシは教室で友達のイオリに飛びつくように頼みごとをしていた。

「おい受験生よ勉強は!?」

「やるやる!だから少しだけでも良いから!アタシに麻雀を~~~~!!!!」

「わかったから離れい!」

 かなり教室中の視線を集め、また今日も元気だねーという目で温かく見守られ、ひとまず話しを聞いてくれることになった。

「ってゆーか、『アンタの教えなんか無くても一人で強くなる』って言ってたのは誰だっけ?」

「お前だ!」

「お前だよ!!」

 イオリはアタシに麻雀を教えてくれた張本人。他の周りがアニメの話題で盛り上がってる中、一人達観した振る舞いをしていたのに気づいて聞いてみると、どうやら小さいころからおじいちゃんに教えられて麻雀を打ってきたらしい。

「負けたの!負けたんだよ!」

「そりゃ麻雀なんて基本クソゲーなんだし、ちょっと負けたくらいで取り乱すことは無いんだって」

「違う~~~~~!!!!そうじゃない~~~!!!そうじゃないくらいに~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「まず落ち着いてほしいんだけど…」

 アタシは、初めてやったリアル麻雀で、初めてあった人と打って、ものの見事に木っ端微塵にされた話を全部した。

「……………。ほう。お前と弟クンとマユナちゃん3人がかりで4連敗。なるほどね。ちょっと俺に紹介してくんね?日取りはそちらに合わせるから」

「勝負師の血が騒ぐのは今はどうでも良いから!」

「と言っても、その、ユウキさんだっけ?ユウキさんの言うとおりだと思うけど?リアルでやるのとネットでやるのは違うよ」

「4連敗が当たり前なの!?」

「よっぽど信じられないんだろうけど、ありえないことじゃないと思うなぁ。そんなに言うなら俺に見せてみ?」

「何を」

「お前の麻雀」

 

「イオリさん、こんちは」

「おー、弟クン」

 アタシの麻雀を見てもらうことになり、イオリを家に連れてきたわけだけど、そういえば自分の麻雀を強い人に見てもらうのって初めてだった。

「どこでやるん?」

「座ってて。今パソコン持ってくる」

「ん」

 別にアタシの部屋に入れても良かったんだけど、マユちゃんが来たときはいつもリビングでやってたから。

「何するんすか?」

「サツキの麻雀見てみようと思って」

「…………教えろ教えろ言われましたか」

「その通りだよ」

「持ってきたよー」

「俺も居て良い?ねーちゃん」

「良いけど、アンタ部活は?」

「ミレイ先生が出張中だからあんま派手なことできなくて、軽くウエイトして帰ってきた」

「マユちゃん連れて来いよ!!!!」

「あいつもあいつでこの前の勝負で思うところがあったっぽくて、ユウキさんに教えてもらうとか言ってたしな」

「………、むぅ」

 もしかしたら、それが1番良い選択なのかもしれない。負けた相手に教えを乞う方が、手っ取り早いのかもしれない。

 でも、多分あの人は「打てば慣れる」としか言わない気がするし、アタシ的には次に打つときはちゃんとあの人と打ち合えるぐらいにはなってたいし!

「アンタは?ユウキさんに教えてもらわなくて良いの?」

「うーん。それでも良いんだけど」

 もしかしてアタシと同じ理由なのかなと思った。

「マユナな、今までアニキと真剣勝負ってしたこと無かったんだと。初めてぶつかって、負けるのが分かり切ってたとはいえ、っつーかだからこそ、『お兄の大きさを再確認できた』らしい。なんかそれ以来、前よりももっと明るくなったような感じで。たぶんアニキと一緒に何かをやるのが楽しいんだろうな。なんかあの兄妹は、今は邪魔しちゃいけん気がする」

「……そう…」

 相変わらず、よく人を見てる。

 カズキはアタシとは違う。

 アタシは凡人だ。

 アタシたちの父は医者で、エリートの一人として挙げることはできるだろう。

 でも、その血を引いたのはカズキだけ。

 アタシは『天才』的な素質を持っていなかった。

 アタシたちの母は、父や九条家の両親に比べれば普通。脱サラして父と結婚した後、貯めたお金(父込み)で夢だったという小さな飲食店を経営している。

 劣等者では決してないが、父らに比べれば平凡な方だろう。

 アタシはそっちの方の血を色濃く継いだのだと思う。

 それに気づいたのが小学校の4年生頃で、その時から『平等』が当たり前だと思ってたアタシは、姉としてこの『天才』弟にだけは越えられてはならないという、ただその一心で努力する道を歩み続けた。

 …………。

 『天才』のカズキは、他人の顔色から感情を汲むことができる特技があった。

 医者の血なのか。もっと奥深くの感性なのか。

 そのカズキが『明るくなった』と言ったならそれは事実だろうし、邪魔しちゃいけないと思ったのも、かなり信用度の高い『カン』な気がする。

「俺もマユナちゃんに会いたかったなぁ。それよりもっとユウキさんって人に会いたかったけど」

「イオリさんも、すごい麻雀強いんですよね?」

「まあ、人よりはね」

「じゃあさっそく見てもらうね」

「おう」

 今はとにかく教えてもらう。

 もう1度あの卓を囲むために。

 

続く

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